#26 南国気分満載!アロハシャツの魅力に迫る
アロハ看板

2024.7.24

南国気分満載!アロハシャツの魅力に迫る

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

アロハシャツのルーツとは

身も心もアクティブになる夏。ファッションも夏らしさ全開でいきましょう!
夏らしいファッションアイテムの代表格といえば、そう、アロハシャツ。
今回はアロハシャツにまつわるストーリーをご紹介したいと思います。

アロハシャツとはご存知の通り、ハワイ生まれのシャツです。
裾はパンツの外に出して着るという絶対的なルールがあり、前開きのボタン仕様、ルーズフィットな半袖シャツという形が一般的です。
かつては開襟シャツが主流でしたが、最近は首元までボタンがあるタイプやボタンダウンのものも多いようです。
また前開きはフルオープンに限らず、胸元までのプルオーバータイプもあります。
アロハシャツの定義も、時代とともに変わってきているようです。

南国・ハワイでも涼しく快適に過ごすために生まれたアロハシャツ。
ルーツについては諸説ありますが、以下の二つが有力のようです。
説その1。アメリカの開拓民が移動時に着ていた、開放感のある“サウザンド・マイル・シャツ”がルーツ。
説その2。ヨーロッパの船員たちが航海中に着用していた、開襟のセーラーシャツがルーツ。

どうやらどれか一つだけが正しいわけではなく、19世紀にアメリカやヨーロッパで一般的に使用されていた、それらの動きやすいワークシャツが、複合的にハワイへ伝わったようです。

当時、ハワイに入植していた中国系移民は、そうした欧米からきたワークシャツを参考に、農場労働者用の新しいシャツ“パラカ”を作ります。
パラカは純粋なワークウェアなので、汚れが目立たないような地味な色柄のものが普通でした。
それを明るく派手なものに変えたのは日系人です。

19世紀終盤から20世紀初頭にハワイへ移住した日本人は、サトウキビプラントを開拓して働いていました。
彼らは、母国から持ち込んだ古い着物や浴衣を仕立て直し、パラカをベースとしたシャツをつくります。
それこそが元祖・アロハシャツなのです。

どこかオリエンタリズムを感じるアロハシャツのあの派手な総柄は、実は着物の柄だったと考えると納得できますね。

アロハ①
photo:Hawaii Digital Newspaper Program UH Manoa Libarary/flickr

ヴィンテージアロハと日本での流行

日本人が生み出した派手な総柄シャツは、やがてハワイの土産物として用いられるようになり産業化。ハワイ諸島がリゾート地として世界的に注目されるとともに、国際的評価を得るようになります。
しかしそのシャツが“アロハ”と呼ばれるようになったのは、1930年代の後半になってからでした。

もともとハワイ語の「aloha」とは、“愛”や“親切”を意味します。そこから転じて、“おはよう”“こんにちは”“ようこそ”“さようなら”といった日常の挨拶にも使われるようになった万能語です。

1936年、エラリー・チャンというハワイ在住の中国系シャツ職人は、自作のシャツのブランド名を「アロハ」としました。
するとその後間もなく、“アロハシャツ”は一般名称化していきます。

今では“ヴィンテージアロハ”として珍重される1930〜50年代のアロハシャツは、レーヨンのテロテロとした独特の素材感から“シルキーズ”とも呼ばれました。
しかし1955年、レーヨンの大手製造元であったアメリカのデュポン社が火災に伴って工場を作り替えると、この独特なテロテロ感のあるレーヨンが減産となり、以降のアロハシャツの素材は、綿や混紡が主流になっていきます。

日本でアロハシャツが最初に流行ったのはその頃、1950年代半ばだったと言われています。
はからずも仕掛け人となったのは、あの石原慎太郎です。一橋大学在学中の1955年、デビュー小説『太陽の季節』が発表されると、その内容に刺激を受けた若者が、無秩序で享楽的なライフスタイルを送るようになります。
彼らのファッションは、夏の湘南ビーチなどによく似合うリゾートテイストで、前髪を垂らし後ろを刈り上げた短髪(慎太郎カット)、スキニーパンツ、サングラス、そしてアロハシャツがお決まりでした。
“太陽族”と呼ばれるようになった彼らの出で立ちは、日本初のストリートスタイルと呼んでもいいものです。

当時の日本では、普通の若者は学校がない日であっても学生服を着るのが当たり前でした。365日、画一的な詰襟・白シャツに黒ズボン、そして制帽をかぶるスタイルです。
そんな中、派手なアロハシャツを着た太陽族はいかにも異端、そして流行の最先端を走るかっこいい集団だったということは想像に難くありません。

アロハ②
photo:Sarah Shreeves/flickr

アロハシャツといえばレインスプーナー

その後、日本でも世界でもアロハシャツの人気は一旦落ち着きます。
そして人気が再燃するのは、1970年代に入った頃でした。
今日でもアロハシャツブランドの代表格であるレインスプーナーを筆頭に、パイナップル・ジュース、クーラ・ベイといったブランドが、時代に合った新しいアロハシャツをリリースし、注目を浴びるようになったのです。

アロハシャツの最大の魅力は、独特の絵柄と色です。伝統的には、ハワイに古くから伝わる物語をモチーフにした「ハワイアナ」、ハイビスカスをモチーフとした「フローラル」、日本の着物地をモチーフにした「日本柄」、絵葉書のような写真をシルクスクリーンでプリントした「ピクチュア」などがありますが、1970年代以降に人気を集めたブランドはそれにこだわらず、新機軸の色柄を次々と生み出し、アロハシャツの世界を大きく広げていきました。

その中には、染色した生地の裏側をシャツの表に使う「リバースプリント」と呼ばれるものがありました。
一般的なアパレルではほとんどなじみがないのに、アロハシャツではとてもよく用いられるこの技法。もともとはレインスプーナーが、1960年代に開発・発売したものです。
発売当初はとても驚かれたこのリバースプリントでしたが、現在では様々なアロハシャツブランドが取り入れ、一般的になっています。

レインスプーナーが裏地を表に使った理由は、アロハシャツ特有の派手な発色を軽減するためだったと言われています。
日本の着物や浴衣から発祥したものなので、1960年代までのアロハシャツはとにかく派手なイメージが強く、好きな人は好きですが、誰もが気軽にコーディネイトできるものではなかったようです。

リバースプリントにすると、表面のデザインはややぼんやりとした印象になります。これにより派手すぎず、控えめで落ち着いたデザインとなり、普通の人も手を出しやすくなりました。
1970年代にアロハシャツの人気が復活したのは、このリバースプリントの普及も大きな要因だったのです。

アロハ③
photo:Calsidyrose/flickr

広がるアロハシャツの世界

アロハシャツの世界をリードしてきたレインスプーナー。最近では様々なコラボ商品が話題になっています。
Z-CRAFTで扱っているMLBとのコラボシリーズもその一つ。

【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】
【レインスプーナー】

ロサンゼルス・ドジャース、ボストン・レッドソックス、シカゴ・カブス、シカゴ・ホワイトソックスなどなどのメジャーリーグ球団とタッグを組み、球団ロゴや野球モチーフの柄がアロハ調でプリントされています。

どれもごく自然で違和感のないプリントになっていますが、よく見ると“野球”と“アロハ”という意外な取り合わせがユニークで、他にはないデザインのアイテムになっていて、非常におすすめです。

また、ご紹介してきたような正統派のアロハブランドだけではなく、今は様々なアウトドアブランドやスポーツ系ブランドが、独自の観点から生み出したアロハシャツをリリースしています。

アウトドアギアや自然をモチーフにした柄が秀逸なザ ノースフェイス(ハーフパンツもあり)。
サーフブランドらしいやや細身でスマートなシルエットと爽やかな柄が新鮮なクイックシルバー。
ブランドのレジェンド的存在であるアーティスト、ボブ ・ムーアによるアートワークがプリントされたデウスエクスマキナ 。

Z-CRAFTでも従来の“アロハシャツ”の定義に縛られないような、多彩でユニークなアイテムが展開されているようですので、是非お気に入りの一枚を見つけてみてください。
止まる気配のない円安&インフレで、かつてのように気軽にハワイ旅行なんてできないご時世ですが、お気に入りのアロハシャツを着込んだら、気分だけはまさに「アロハ〜」となることは間違いないでしょう。

【ノースフェイス】
【ノースフェイス】
【クイックシルバー】
【クイックシルバー】
【デウスエクスマキナ】
アロハ④
photo:Maridav/ iStock

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