#28 パリ発、100年の風格と革新!パラブーツの名作シューズを徹底紹介

2024.8.21

パリ発、100年の風格と革新!
パラブーツの名作シューズを徹底紹介

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

100年以上の歴史を持つブランド

フランスの名門シューズメーカー、パラブーツ。
創業者は、1878 年にアルプスの麓にある小さな村・イゾーの貧しい農家に生まれたレミー=アレクシス・リシャールという人物です。
レミーはイゾー村に数多くあった靴工場のひとつで、革の裁断工員をしていましたが、あるとき運を試そうと考えます。
自分が考案した靴のデザインをパリへ持っていき、工場の「代理人」と自称して売り込んだのです。

彼の計画は、見事に成功。
レミーは大手顧客から注文を獲得すると、イゾーの工場で自分の靴を製造させるようになります。
やがてパリで彼の靴の評判となり、労働者から企業経営者などの上流階級に至るまで、顧客の層を広げていきます。
それを受けてレミーは工場から独立。スタッフを雇用し、みずからの工房を立ち上げます。
それが1908年、パラブーツの創業の年ということになります。

レミーの工房は創業当初、イゾー村に大勢いるアルピニストや軍関係者に向けた登山靴を製作します。
1910年には裕福な家庭に育った妻ジュリエッタと結婚。彼女の実家から資金援助を受け、リシャール・ポンヴェール社を設立すると、次第に事業を拡大していきます。

第一次世界大戦(1914−1918)でレミーは徴兵されますが、戦闘中に負傷し前線から退きます。後方で軍靴や馬具、その他の装備の修理を担当するうちに戦争は終結。
ビジネスの世界に戻り、パリのレ・アール市場近くに倉庫を購入します。
1920年には、以前勤めていたイゾーの工場を購入し、地元での製造とパリでの販売体制を整えます。
そして同年、山岳労働者をターゲットとしたワークブーツを製作。「ガリビエ」と名付けて発売し、ブランドの基盤を固めました。

旅好きだったレミーは1926年、トレードショーを見るためアメリカへ渡ります。その際、現地で遭遇したラバーブーツに感銘を受け、翌年の帰国後には自社のシューズに取り入れる試みを開始します。
それまで一般的だった木製や革製のソールは、履き心地が悪いうえに劣化が早かったので、それに変わる素材としてラバーを実用化したかったのです。

パラブーツ①
photo:Domreboud

独自開発のラバーソール

レミーはブラジルのPARA(パラ)港から、質のいいアマゾン産ラテックス(天然ゴム)を輸入するようになりました。
そして港の名にちなみ、1927年にParaboot(パラブーツ)ブランドを立ち上げたのです。

ブラジル産ラテックスを使いラバーソールの自社生産を始めたレミーは、そのソールでタウンシューズの生産も開始します。
パラブーツのタウンシューズは、登山靴をルーツとしているため堅牢な作りが特徴でした。また、山歩きのときのように長時間履き続けても疲れにくかったため、人気商品になっていきます。

パラブーツのタウンシューズは、イタリアやイギリスの高級紳士靴のようなシャープなデザインではなく、ぽってりと丸みを帯びた親しみやすいフォルムを持っていました。
このフォルムも人気が高まった理由のひとつです。
ビジネススタイルにもカジュアルスタイルにも合わせやすく、汎用性の高い靴として人々に受け入れられたのです。

1945年にはチロリアンシューズの「ミカエル」が大ヒット。
1960年代にはアウトドアシューズでも続々とヒットを飛ばし、パラブーツの名はいよいよ世界的に知れ渡るようになり、会社は急成長しました。

その頃、社長となっていたレミーの息子ジュリアンは、アイススケートシューズなどスポーツ用品の分野へと生産を多角化していきました。
しかしその多角経営が仇となったのか、1970年代初頭になると同社は財政難に陥ります。
経営権を受け継いでいたレミーの孫ミシェルは、なんとか会社を立て直そうと努力しますが不調に終わり、1983年には倒産寸前になります。
しかしそこからパラブーツは、広げすぎたジャンルを絞りながら経営を健全化するよう努めます。

パラブーツが生み出してきた歴代のシューズは名作揃いでしたので、再起動するための底力は十分にありました。
そして1988年頃にはオンリーショップの出店が始まり、1994年のベルギーを皮切りに海外ショップも次々とオープン。
汎用性の高かったパラブーツの名作シューズは、新しい時代の若者のストリートスタイルにも受け入れられるようになり、ブランドは見事に復活したのです。

パラブーツ②
photo:Ildo Frazo/iStock

軍用だったグルカサンダル

そんな歴史を持つパラブーツの、おすすめモデルをいくつかご紹介しましょう。
パラブーツといえば、登山靴やワークブーツのエッセンスを持つタウンシューズが有名なので、秋冬物のしっかりした靴をイメージする人が多いかもしれません。しかし夏向けの涼しげな商品もラインナップされています。
今、注目したいのはレザーサンダルの「パシフィック」です。

【パラブーツ】
【パラブーツ】

「パシフィック」はグルカサンダルタイプで、サンダルながら足をしっかりホールドする構造を持っています。ソールにはクッション性や屈曲性に非常に優れた「SPORT SOLE」が採用されているので、長時間の歩行でも疲れにくいのが特徴。
夏のカジュアルスタイルでも、大人っぽく上品に仕上げたい人に最適なサンダルです。

グルカサンダルとは、「グルカ兵」と呼ばれる兵士が履いていた靴に由来するサンダル。グルカ兵は19世紀から20世紀にかけて、イギリス東インド会社やイギリス陸軍で重要な役割を果たしていたネパール出身の兵士です。

戦闘用として作られていたサンダルなので、革のストラップが足をしっかりと覆うスタイルで、耐久性や足の保護が重視されています。近代に入ってからはその機能美がが評価され、ファッションアイテムとして世界中で広まりました。
多くの革のストラップが足をしっかりと固定しつつも、サンダル特有の通気性を確保しているため、夏の暑い時期にも快適に履くことができます。
ストラップが足全体を包み込むので、通常のサンダルよりしっかりとしたホールド感があります。また、革製なので履きこむほど足になじみ、独自の風合いが楽しめます。

今日、さまざまなブランドからグルカサンダルがリリースされていますが、この「パシフィック」はパラブーツらしい柔らかい丸みを帯びたフォルムが特徴。
ショートパンツから、キレイ目なスラックスまで、さまざまなスタイルに合わせやすく、とてもオススメできる一足です。

パラブーツ③
photo:World War Ⅱ In View/flickr

パラブーツの歴史的名作

続いてのおすすめは、前述のブランドヒストリーの中にも出てきたパラブーツの定番にして、シューズ史に刻まれる名作モデル「ミカエル」です。

【パラブーツ】
【パラブーツ】
【パラブーツ】
【パラブーツ】
【パラブーツ】

1945年にリリースされるや世界中で大ヒットとなった、チロリアンシューズの代名詞のような一足です。

デザインはシンプルながら重厚感があり、日常使いからフォーマルなシーンまで幅広く活用できます。
アッパーには上質なレザーが使用されており、履けば履くほどに足になじみ、独特の風合いを醸し出します。さらに、パラブーツならではの堅牢なノルウェージャン製法が採用されており、防水性と耐久性に優れた構造になっています。

ソールは、パラブーツのトレードマークでもあるラバーソールが使われており、快適な履き心地と優れたグリップ力を提供します。このラバーソールは、あらゆる天候条件でも滑りにくく、長時間の歩行でも疲れにくいと評判です。
まさに、パラブーツが追求する機能性と美しさを象徴するモデルであり、そのデザインは時代を超えて愛されています。シンプルでありながらも存在感のある一足として、信頼できるパートナーのように長く履き続けることができるでしょう。

そしてもう一足。こちらも忘れてはならないパラブーツの代表的なモデル「アヴィニョン」です。

【パラブーツ】
【パラブーツ】
【パラブーツ】

パラブーツならではのクラシックな魅力と洗練されたデザインが融合した一足です。
最大の特徴は、そのエレガントなデザインでしょう。細くシャープなフォルムが特徴のUチップシューズで、細部にわたる丁寧な仕上げが際立ち、ビジネスシーンからカジュアルなスタイルまで幅広く対応できる万能なシューズです。
上質なレザーが使用されたアッパーは、履くほどに足になじみ、美しい光沢が増していきます。

アウトソールはグリップ力が高い「GRIFF Ⅱ SOLE」を採用。優れたグリップ力と衝撃吸収性を提供します。これにより、どんな地面でも安定した歩行が可能となり、日常の様々なシーンで活躍します。

歴史が保証するパラブーツの名作シューズ、この機会にぜひゲットしてみてはいかがでしょうか。

パラブーツ④
photo:LME Press/flickr

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