#9 機能性と耐久性を追求した、アウトドアウェアの代表格「フィルソン」
フィルソン看板

2024.1.31

機能性と耐久性を追求した、
アウトドアウェアの代表格「フィルソン」

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

ゴールドラッシュに沸くシアトルで創業

フィルソンの創業者は、1850年生まれのクリントン.C.フィルソン。
アメリカ中西部のネブラスカ州で育った彼は、父親譲りのフロンティアスピリッツと、野外活動への強い情熱を持つ男だったそうです。

クリントンは地元で農業を営んだ後、ミルウォーキー鉄道(正式名称シカゴ・ミルウォーキー・セント・ポール・アンド・パシフィック鉄道)の車掌などをしながら全国を放浪。
当時のアメリカ各地に出現していた、自由を愛する渡り鳥労働者=“ホーボー(hobo)”として生活していたようです。

そして1890年代に入った頃、アメリカ北西部へとやってきてワシントン州カークランドに住み着きます。
そこでは、古いレンガ造りの建物で金物店を経営したり、町の郵便局で働いたりもしたそうです。

しかし事業は頓挫し、今度はシアトルへ移住。
現在は連邦庁舎が建っている1番街903番地にて、木こりのための小さな衣料品店、シアトル・ウールン・ハウスを開きます。

当時のシアトルはゴールドラッシュの拠点になっていて、一攫千金を夢見るゴールドハンターたちが殺到。アラスカやカナダ、アメリカ北西部の金鉱山へ向かう前に準備を整えるための街になっていました。
クリントンはやがて、そんな彼らこそが本当の“金脈”であると考えるようになったのでしょう。

1897年、クリントンは金の採掘メンの需要に応えるため、経営していた衣料品店を発展させる形でフィルソンを設立します。
初期のフィルソン社が扱ったのは、ウールの衣類や毛布、ニット商品、ブーツ、靴、モカシン、寝袋といった商品でした。
いずれも、金鉱があるアメリカ大陸北部の極寒の気候に、そして金の採掘というハードワークに耐えられるように、分厚い生地を使ってあくまで頑丈につくられていたそうです。

それからほどなくしてゴールドラッシュは終わってしまいますが、フィルソン社はターゲットをハンターや釣り人、工場労働者、探検家、それに、船乗りや鉱夫へと変えながら、丈夫で快適な衣料を開発し続けます。
とにかく“どんな過酷な環境下でも生き延びるため”という信念のもとにつくられていたフィルソンの質実剛健な衣料に対し、多くの顧客たちは全幅の信頼を寄せていたそうです。

フィルソン①
photo:Rob Ketcherside/flickr

自由な生き方のヒッピーに愛されて

創業者のクリントンはフィルソンを立ち上げる前、職を転々とする中で木こりを生業にしていたこともあります。
その経験を活かして1914年に発売した林業従事者用ジャケットはベストセラー商品となり、フィルソンというブランドを全米に知らしめる結果となりました。

クリントンは1919年12月に亡くなるまで引退することなく働き、死後は会社の所有権が未亡人のウィニフレッドと甥のジョージ・ストローブルに引き継がれました。
その後もフィルソンは、1945年にUSフォレストサービス(森林警備隊)のユニフォームとして、優れた撥水性能を備えるクルーザージャケットとパンツをリリースするなど、プロアウトドアマンのための堅実なプロダクツを次々と発表していきます。

1960年代には、アウトドアマンのための一流ブランドとして、フィルソンの評判は国内を超えて世界中に広まっていきました。
高品質なアウトドアウェアを扱う諸国の店でフィルソンの製品が売られるようになり、グリーンランドといった超遠方からも通信販売での需要があるほどだったそうです。

折からのヒッピームーブメントも、フィルソンにとっては追い風になりました。
前述のとおり、創業者・クリントンはホーボーとして暮らしていた経験があります。
そして1960年代から70年代にかけて、若者の間を席巻したヒッピーの生き方とは、まさに、19世紀終わりから20世紀初頭にかけて出現したホーボーを原点とするものだったのです。
ホーボー出身のクリントンが立ち上げ、その精神を子孫たちが引き継いだフィルソンに、ヒッピーと相通ずる自由な精神性が秘められていることを、当時の若者は敏感に感じ取ったのかもしれません。

そしてそこから今に至るまで、フィルソンは厳しい自然環境の中で働く森林警備隊、林業従事者、ハンター、そして冒険家など、真のクオリティを必要とする人々に愛され続ける一方、そのシンプルでタフなデザイン性が受けて、タウンユース用としても高い評価を受け続けています。

フィルソン②
photo:Paul Sableman/flickr

創業当時のフロンティアスピリッツを今に

それではフィルソンの数あるラインナップの中から、おすすめの定番商品を見ていきましょう。

最初はもう、これしかありません。
フィルソンの看板商品である「マッキノー クルーザー ジャケット」です。

【フィルソン】
マッキノー クルーザー ジャケット
【フィルソン】
マッキノー クルーザー ジャケット

質実剛健な雰囲気が漂うこちらのアウトドアジャケットは、創業時である1897年に開発したモデルを原型に、1914年に特許を取得しつつ本格販売を開始した、長い歴史を誇る伝説の一品。
フィルソンの歴史を紐解いた前項で、“1914年に林業従事者用ジャケットはベストセラー商品となり”云々と書きましたが、まさしくそれがこの「マッキノー クルーザー ジャケット」なのです。

100%バージンの“マッキノーウール”で作られている「マッキノー クルーザー ジャケット」は、快適で自然な保湿性と撥水性を併せ持ち、どんな天候条件でも高い保温性を発揮する非常に暖かいジャケットです。
フロントに施された特徴的な4つのフラップポケットを含む9つのポケットは、さまざまなアウトドア活動にとても便利な働きをします。
バックにも両サイドから出し入れ可能な大きなマップポケットがあるなど、収納力が抜群に高いジャケットなので、日常の使用にも最適です。

“マッキノーウール”というのは、アメリカとカナダ北西部に生息する羊から厳選した素材で作られた100%天然素材。
高い耐久性と通気性を誇り、天然素材ならではの自然な風合いが魅力になっています。

「マッキノー クルーザー ジャケット」と並び、そんな最高の素材を使用した「マッキノー ウール ワークジャケット」もおすすめです。
こちらは、長い長い歴史を持つフィルソンの過去のアーカイブから復刻されたモデルを、現代にマッチするデザインへアップデートしたワークジャケット。
とはいえ、フロントの開閉や袖口の調節に真鍮製スナップボタンを採用するなど、このブランドの真骨頂であるクラシカルな雰囲気を大事にしている点が最大の魅力です。

「マッキノー クルーザー ジャケット」と同様の分厚いウール生地が使われていますが、丈は短めにカットされているので、着たまま椅子に座っても裾が上がらないという利点があります。
このヒップレングスカットによって、ポケットやツールベルトにも簡単にアクセスできるので、よりアクティブなアウトドア活動向けのジャケットと言えるでしょう。

【フィルソン】
アラスカンガイドシャツ
【フィルソン】
マッキノーウール フィールド パンツ
【フィルソン】
マッキノーウール ワーク ジャケット
【フィルソン】
マッキノー ウール ベスト
【フィルソン】
アップランド ブラッシュ パンツ
【フィルソン】
DRY TIN 5 POCKET PANTS
フィルソン③
photo:Robert Sheie/flickr

筆者も長年愛用するトートバッグ

最近のフィルソンで、特に人気の高いアイテムがバッグです。
さまざまなものがラインナップされていますが、こちらではその中から特におすすめの3点をご紹介しましょう。

まずは「ミディアム ラギッドツィル ダッフル バッグ」。

【フィルソン】
ミディアム ラギッドツィル ダッフル バッグ

丈夫なラギッドツイルとブライドルレザーを使用した、このクラシカルな雰囲気のダッフルバッグ。た目のスタイリッシュさだけではなく、内側の縫い目にはほつれや磨耗を防ぐ補強が施されているなど、目立たない部分もこだわって製造された頑丈さが売りです。
ブライドルレザーのショルダーストラップは取り外し可能で、ハンドキャリーにも対応可。
飛行機の座席頭上の収納スペースにもピッタリ収まるサイズなので、旅行のお供として最適なバッグです。

続いて「ミディアム ドライ ダッフルバッグ」です。

【フィルソン】
ミディアム ドライ ダッフルバッグ

軽量で柔軟性があり、耐摩耗性に優れた生地に、ポリウレタンコーティングが施されているので、耐久性と防水性は抜群。ジッパー部分も防水テーピング仕様になっているので、土砂降りの雨でも、中に入れたものが濡れる心配はまずありません。
逆に、濡れた服や水着、ウエットスーツなどを中に入れても、外側に水が染み出す心配はないので、車の座席などにも安心して置くことができます。
65リットルとビッグサイズなので、4〜5泊の旅行などにも対応できるでしょう。

そして最後は真打登場。
「ラギッドツィル トートバッグ ウィズ ジッパー」です。

【フィルソン】
ラギッドツィル トートバッグ ウィズ ジッパー

撥水性、耐磨耗性の優れた頑丈なラギッドツイル地が魅力のトートバッグで、肩から下げるのに便利な長めのハンドルがついているため、重い荷物を入れても楽ちんです。
最大の特徴はトートバッグながら頑丈なジッパーがついていること。これのおかげで中の荷物が飛び出さないので、大事な物を入れたり、飛行機の荷物棚に放り込んだりしても安心です。

何を隠そう筆者はこの「ラギッドツィル トートバッグ ウィズ ジッパー」をかれこれ10年以上も愛用しています。
使い倒しているのでいい味が出てきましたが、本当に頑丈でどこにも不具合がなく、まさに一生物として使い続けるつもりでいます。
正味な話、かなりおすすめですので、フィルソンのアイテムをまず何かひとつ欲しいと思っている人には、こちらを推したいと思います。

【フィルソン】
スモール ラギットツィル ダッフルバッグ
【フィルソン】
ドライデン ブリーフケース
【フィルソン】
ドライデン
【フィルソン】
48アワー ティン クロス ダッフル バッグ
【フィルソン】
スポーツマン ドライバッグ
【フィルソン】
24アワー ティン クロス ブリーフケース
フィルソン④
photo:Bryan Maleszyk/flickr

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