#16 ベースボールキャップの名門ブランド『ニューエラ』と『'47』の魅力を徹底解剖!
ベースボールキャップ看板

2024.4.12

ベースボールキャップの名門ブランド『ニューエラ』と『'47』の魅力を徹底解剖!

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

ベースボールキャップって何?

唐突ですが、“ベースボールキャップ”ってどういうものか、知っていますか?

「知ってるさ。当たり前だろ」という声が聞こえてきそうです。
“ベースボールキャップ”という言葉から多くの人が思い浮かべるのは、頭の形に沿った丸いキャップ型で、半円形に近いバイザー(ツバ)が付いたあの形でしょう。
もちろんそれは間違いではありませんが、十分とも言えません。
同じような形状の帽子でも、ワークキャップやアポロキャップ、ジェットキャップ、ジョッキーキャップなど、ほかにも色々あるからです。

ベースボールキャップとは、トップが頭に密着する丸形で、前部に太陽光からプレイヤーの目を保護するための、ひさし(バイザー)があり、キャップ部が5〜6個のパネルで構成されていて、頭頂部にくるみボタンが付いている帽子のことです。
またベースボールキャップの中でも、パネルの一部(4枚のパネル)が網のようなメッシュ状になっている帽子は“メッシュキャップ”、頭を覆うトップ部分のかぶりが特に浅いものは“ローキャップ”などと呼ぶこともあります。

ベースボールキャップが初めて世に出たのは1860年頃のこと。
当時のアメリカのプロ球団、ブルックリン・エクセルシオールズに採用されたものがその元祖です。
初期のベースボールキャップは現在のものよりもツバが小さめだったようですが、他の特徴は、今の私たちが認識しているベースボールキャップそのもの。
この帽子は当初“ブルックリンスタイル”と呼ばれ、1900年頃になると巷で流行しはじめます。
以来、実用的でスポーティな帽子として世界中に広まり、野球をするときだけではなく様々な場面で用いられるようになったのです。

アメリカンなカジュアルスタイルの重要アイテムであるベースボールキャップ。
名門ブランドといえば、「ニューエラ」と「'47」です。
今回はこの2つのブランドを軸に解説したいと思います。

ベースボールキャップ①
illust:Rizuk_pic/iStock

唯一のMLB公式ブランド

MLB(メジャーリーグ・ベースボール)唯一のオフィシャルサプライヤー、つまり選手が着用する公式キャップブランドとして名高いニューエラ(NEW ERA)が創業したのは、今から100年以上前の1920年のこと。
創業者はエルハルド・クック、創業の地はニューヨーク州の街・バッファローです。

E・クック・キャップ社という社名で営業をはじめた当初、同社の主要商品はベースボールキャップではなく、紳士向けのカジュアルキャップでした。
服といえば自家製かオーダーメイドだった時代から、既製服の概念が芽生え始めていたその頃、E・クック・キャップ社のカジュアル帽は、“ギャツビースタイル”と呼ばれる当時流行の服によく似合う帽子として人気を集めたそうです。

1922年には社名をニューエラ・キャップと変更。そしてアメリカの国民的娯楽として野球の人気が高まる状況を見て、創業者の息子であるハロルド・クックは1932年にベースボールキャップの製造を開始します。
初めてMLB用キャップを作ったのは1934年のこと。MLBの公式となるためには、激しい受注合戦を勝ち抜かなければなりませんが、品質の高さに定評のあったニューエラはこの年、クリーブランド・インディアンズのホーム用とアウェイ用、2種のキャップ製造を受注したのです。

二代目社長となったハロルドは、従来にはなかったたくさんの色を使ったキャップや、従来は革製だった汗止めバンドに綿を採用したキャップ、後部のアジャスターベルトでサイズ調整が可能なキャップなど、画期的な商品を次々と考案。
その甲斐ああって、ベースボールキャップ業界のトップに躍り出ます。

1950年には、ブルックリン・ドジャース、シンシナティ・レッズ、クリーブランド・インディアンス、デトロイト・タイガースといった名門チームにキャップを供給するようになり、1954年には、現在もニューエラを代表するモデル 「59FIFTY」(フィフティーナインフィフティー)が誕生します。

ベースボールキャップ②
photo:Western New York Architecture Deep Cuts/flickr

ニューエラの代表モデル

59FIFTYという名前の由来には諸説ありますが、このキャップに使われたウール生地の品番が5950番だったという説がもっとも有力です。
現在の59FIFTYは、ウール生地ではなくポリエステル生地100%に変更されていますが、バイザーがフラットでかぶりが深めという特徴的なシルエットは、ニューエラを象徴する形状としてしっかり受け継がれています。

1974年にはメジャーリーグの24あるチームのうち、20チームがニューエラと契約します。この頃から、応援している選手と同じキャップをかぶることがファンの間で流行。ニューエラ社はさらに売り上げを伸ばし、大きく成長していきます。
そして今では、アメリカメジャーリーグ唯一の公式キャップメーカーとして、世界的な知名度を誇るブランドになっているというわけです。

【ニューエラ】
【ニューエラ】
【ニューエラ】
【ニューエラ】

ニューエラのベースボールキャップで人気の高いモデルは他に、「9FIFTY」(ナインフィフティー)と「9TWENTY」(ナイントゥエンティー)があります。

9FIFTYは59FIFTYと同じフォルムながら、後部にベルト式アジャスターがついていることが特徴です。
59FIFTYは“フィッテドサイズ”と呼ばれる約1cm刻みの独特なサイズ展開であるのに対し、9FIFTYはアジャスターによってより細かく調節することができるので、どんなサイズの頭にもジャストフィットします。

【ニューエラ】
【ニューエラ】
【ニューエラ】
【ニューエラ】

9TWENTYは前述の2モデルと比べてかぶりが浅めで、バイザーには最初からカーブがつけられています。また、フロントパネルに芯がないのでかぶり心地は柔らかく、カジュアルな雰囲気のベースボールキャップです。

古くから伝わるベースボールキャップ本来のデザインを頑なに守る、59FIFTYや9FIFTYを深く愛してやまない人はたくさんいますが、決して万人がかぶりやすい帽子ではありません。
その点9TWENTYは今っぽいカジュアルデザインなのでかぶりやすく、女性にも支持者が多いモデルです。

【ニューエラ】
【ニューエラ】
【ニューエラ】
【ニューエラ】
【ニューエラ】

ところでニューエラや次に詳述する'47のベースボールキャップは、バイザーにメタルカラーのステッカーを、購入時のまま貼った状態でかぶり続ける人が多くいます。
これは、1990年代くらいのヒップホップカルチャーから生まれた作法です。

ベースボールキャップ③
photo:charlieh0tel/flickr

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ファン向けだからかぶりやすい'47

もともとは、貧しいゲットー暮らしから抜け出し、「新品のブランドアイテムをどんどん買えるくらいビッグになったんだぜ俺は」というアピールをした、一部のヒップホップな黒人の着こなしから広まったという“ステッカー貼りっぱなし”スタイル。
この場合、ステッカーを剥がさないということとともに、バイザーは曲げずにまっすぐのままにしておくことも大事。
今ではもともとの意味合いはあまり意識されませんが、ベースボールキャップをよりストリートっぽくかぶるなら、そうした作法を守ってみるといいかもしれません。

さて、ベースボールキャップ業界におけるもうひとつのビッグブランドが「'47」。ブランド名は、創業の年に由来しています。
イタリア移民の双子の兄弟、アーサー&ヘンリー・ディアンジェロが、アメリカのボストンで、'47 の前身であるツインズ・エンタープライズを設立したのは1947年のことでした。

彼らは12歳の頃から、ボストン・レッドソックスの本拠地スタジアムであるフェンウェイパーク周辺で2セントの新聞を売り、家計の手助けをしていました。
そして、いつかはスポーツ関連ビジネスで成功しようと夢見るようになり、ペナントや記念品のカート販売を経て、会社の設立に至りました。

それが今やMLB公認のベースボールキャップをはじめ、アメリカの4大プロスポーツリーグ(MLB、NFL、NBA、NHL)や650校以上の大学とパートナー提携を結ぶ一大企業になっているのですから、これぞまさにアメリカンドリームというべきでしょう。

【47 BRAND CAPS】
【47 BRAND CAPS】
【47 BRAND CAPS】

'47のベースボーキャップの特徴は、ニューエラと比べてずっとカジュアルかつファッション的であること。
これは、ニューエラがMLBの公式キャップ、つまり選手が試合中に着用するものと同じであることが売りなのに対し、'47はもとから一般向けのファングッズとして始まっているからです。

そのため'47のベースボールキャップの多くは、かぶりが浅めでバイザーにはもともとカーブがつけられており、エイジングやダメージ加工されたものもあります。
また生地やカラー、ロゴの大きさや配置を含むデザインなども多彩なバリエーションがあります。
野球用の帽子であるということにこだわらず、おしゃれアイテムとしてより自由に楽しみたいなら、'47のベースボールキャップがおすすめです。

【47 BRAND CAPS】
【47 BRAND CAPS】
【47 BRAND CAPS】
【47 BRAND CAPS】
【47 BRAND CAPS】

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さて、いかがだったでしょうか?
一口にベースボールキャップと言っても非常に奥深く、愛すべきアイテムだということがお分かりいただけたと思います。
ぜひ、お気に入りのキャップを見つけてみてください。

ベースボールキャップ④
photo:Annie Mole/flickr

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