2023.12.26
ダウンウェアの歴史と進化
メンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん
メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?
ダウンウェアの歴史
いよいよ冬本番。
寒風吹きすさぶ空の下、恋しくなるのがダウンです。
そこで今回は、おすすめのダウンウェアを紹介したいのですが、その前にちょっとダウンの歴史と機能についておさらいをしてみましょう。
ダウンの歴史は意外なほど長く、寒冷地に住む人類は古代から鳥の羽毛を使い、防寒用の衣服を作ってきたと言われています。
近代の商業的なダウンウェアの初登場は1936年。アメリカのシアトルでスポーツ用品店を経営していたエディ・バウアーが、自身の趣味である釣り用の防寒着として開発したパーカーが、世界初のダウンウェアです。
ナイロン素材の生地をキルティング加工し、内部に鳥の羽毛を詰めるダウンウェアは、保温性に加え、体から出る汗を放出する特徴があるため、アウトドア目的以外にも、極寒地での作業服などとして重宝されました。
第二次世界大戦後には、アルパインクライミングと極地探検において重要な役割を果たすようになります。軽量かつ保温性が高いため、寒冷な環境下で人間の限界に近い活動をする遠征隊などに広く採用されたそうです。
この頃までのダウンウェアは、“究極の防寒着”と見なされ、特殊な環境でのみ使われる服だったのですが、1970年代以降、徐々に一般的なファッションアイテムへと変遷していきます。
世界的なヘビーデューティブーム、そして日本では1980年代に巻き起こったアメカジブームに乗り、冬の街の必需品として定着していくのです。
この頃から世界中のメーカーが、機能性とスタイルを組み合わせたダウンウェアを続々と開発し、都市部での普段着として広く受け入れられるようになりました。
ダウンウェアに使用される主要な材料は、水鳥(主にガチョウやアヒル)の胸部から取られる、軟らかくて短い繊維状の羽毛「ダウン」と、鳥の羽根の硬い部分を含む「フェザー」です。
photo:Mike Mozart/flickrダウンとは、フェザーとは
ダウンは非常に軽量で、高い保温性能を持っており、空気を包み込んで体温を保つ役割を果たします。また、ふわふわと柔らかい素材のため肌に伝わる感触は快適。一方で、通気性が低く、湿気に弱いという短所を持っています。
フェザーは、鳥が空を飛ぶために使う羽根部分の羽毛なので、硬くてしっかりとした構造を持っています。
ダウンよりも通気性が高く、湿気に対する耐性がある一方、保温性能が低く、重量が重いという短所を持っています。
比べてみるとダウンの方が軽くて柔らかく、保温性も高いのですから、ダウンウェアはその名の通り、ダウン100%にすればいいと思うかもしれませんが、そう簡単にはいきません。
一羽の鳥から少量しか取れないダウンは、当然ですが割高です。そのため、ダウン100%のウェアは相当に高価なものとなってしまうのです。
また、フェザーはダウンに比べて通気性が高く、湿気に対する耐性があるため、ダウンに混合することで、より耐久性のある製品を作ることができます。特にアウトドアアクティビティや濡れた状況で使用する場合、フェザーを追加した方が有利となるのです。
もう一つ大事なのは、重量の問題です。
ダウン100%の製品は非常に軽量ですが、冬用のアウターは少し重量感があった方が着心地は良く、ユーザーに好まれる傾向があります。
フェザーを適度に混ぜると、保温性は維持しつつ重さが増すので、より着心地の良いアウターを作ることができるのです。
ダウン素材の品質は「フィルパワー」という単位で表され、この数値が高いほど保温性に優れているということになります。
フィルパワーは500前後が平均で、高級なダウンでは900前後の値になることもあります。
フィルパワーが高いダウンは、少量でも高い保温性を提供できるので、それを使ったダウンウェアは薄くて軽いものとなります。
気軽にガンガン着られるダウンウェア
てな感じで長々とダウンについての蘊蓄を語ってきましたが、そろそろ商品の紹介に参りましょう。
着心地、防寒性、デザイン性、そしてコスパ面などを総合的に勘案した結果、私が今ぜひおすすめしたいと思う製品。
それはZ-CRAFTのハウスブランドである、インクルーシブ(IN'CREWSIVE)のダウンウェアです。
インクルーシブのウェアに使われているダウン素材のフィルパワーは500。ごく平均的な品質のものということになります。
でも「なーんだ、“並”品質か」と侮るなかれ。
数値が高いほど品質が高い=保温性が高いフィルパワーですが、高すぎるとその分、ウェアの価格にも反映されてしまいます。
また、フィルパワーの高いダウンは保温力が強いので、特に極寒の雪山や北極・南極ではなく、街着として使うダウンウェアの場合、少量の使用で事足ります。
するとダウンらしくない、ぺったりとしたボリューム感のないウェアになってしまうのです。
逆にそこそこのフィルパワーを持つダウンであれば、ふんだんに使うことができるので、街着であってもボリューム感に富んだ、ダウンらしいシルエットのウェアになります。
コストの面は言わずもがなでしょう。
インクルーシブは、気軽に扱えて気軽に着れるアウターづくりをモットーにしていますが、好デザインで保温性能バッチリなダウンウェアなのに、1万円を切る値段で提供できているのは、フィルパワー500のダウン素材を選んでいるからです。
インクルーシブのダウンウェアはいずれも、ダウン80%フェザー20%の割合のダウン素材を使用しているそうです。
これは昨今のダウンウェアでは、黄金比率と言われている割合です。
ダウンとフェザーにはそれぞれの特性がありますが、互いの短所を補い合い、適度なコスパとなる割合が、ダウン80%:フェザー20%だと言われているのです。
インクルーシブの3種のダウンウェアは、それぞれ細部までこだわり抜き、魅力的なものに仕上がっているので、どれを選んでも間違いはなさそうです。
あとはお好み次第ということになりますが、私はシームレス仕上げで止水ジッパーを使用し、スポーティな外観に仕上がったダウンパーカー「IN-1238F」を選びました。
しかしこの値段、マジで安いですよね。
気軽にガンガン着て、真冬をアクティブに楽しみたいと思います。
新モデル登場の電熱ウェア
さて、ここまでずっと真冬の“究極の防寒着”として、ダウンウェアをプッシュしてきましたが、インクルーシブにはさらにその上をいく、究極オブ究極の防寒着があります。
ここ数年で注目度がぐんぐん上昇している、電熱式ヒーテッドウェアです。
モバイルバッテリーと接続することにより、ウェアの内部に仕込まれた電熱シートが発熱。バッテリー性能や使用状態によりますが、最高45℃、最長8時間にわたってポカポカ状態が持続するという優れものです。
私は以前からインクルーシブの電熱ベストを愛用していますが、本当にこれが最高。
特にスキーやゴルフ、キャンプ、バーベキューといった真冬の野外遊びのときは大変な威力を発揮します。普段の日でも、真冬は乗るのを避けがちだった自転車に、これさえあれば躊躇なく乗ることができます。
インクルーシブの電熱ウェアは、スイッチを入れてから暖かさを実感するまで、ほんの10秒ほどしかかからないというのがまた良いところ。
真冬は、ちょっとそこまでの買い物とか、朝夕の犬の散歩とかでも、外の寒さを想像して二の足を踏んでしまいがちです。でも、電熱ウェアをサッと羽織り、スイッチを押すとあっという間にポカポカと暖かくなるので、迷うことなく外に出ることができるのです。
私が使っているのは、インクルーシブの電熱ウェアの初期モデルである、アウトドアテイストの中綿入りベストですが、今回、ビジネス対応も可能なVネックベストと、カジュアルなリバーシブルコートがリリースされています。
これは良いですね。私も、またまた欲しくなってしまいました。
電熱ウェアに関しては、いくら言葉を重ねて説明しても、なかなかその良さを伝え切れる自信がありません。
でも、「百聞は一見にしかず」。一度でも袖を通してスイッチをポチッとすれば、即座にファンになるはずなので、皆さんぜひお試しを。
特に僕と同じく冬の寒さが大の苦手だという人は、目から鱗が落ちると思いますよ。