#15 機能性とビッグシルエットの魅力!本物の軍用品から生まれたロスコのカーゴパンツ
ロスコ看板

2024.3.27

機能性とビッグシルエットの魅力!本物の軍用品から生まれたロスコのカーゴパンツ

佐藤 誠二朗さんメンズファッション誌
「smart」元編集長
佐藤 誠二朗さん

メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。
2018年11月には「ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新」が発売。
こちらを本屋で見かけて読まれた方もいるのでは!?
そんな佐藤さんが当店の取り扱いアイテムをコラムで熱く語ってくれるコーナーです!
実はあまり知られていないブランドの歴史などもこれを見れば知ることができるかも!?

小さなロフトで創業したロスコ

1953年のアメリカ・ニューヨーク。
マンハッタンのローワー・イースト・サイドにあるグレート・ジョーンズ・ストリート沿いの小さなロフトで、ROTHCO(ロスコ)は創業しました。創業時の社名はモリス・ローゼンバーグ&サンズ、創業者はミルトン・ソンバーグという人物です。
彼はこの小さな会社で、古着や第二次世界大戦時の米軍余剰品(サープラス)を扱うビジネスを始めます。

大戦の名残がいまだ色濃かったその時代、大量に供給されるサープラスを扱うロスコのビジネスは順調に成長し、間もなくブルックリンのアトランティックアベニューにあった大きな倉庫に拠点を移します。
しかしやがてサープラス品が不足するようになるとロスコは製造業へと移行し、新品の軍用衣類や装備品を供給する会社になりました。

その後もロスコのビジネスは大幅に成長。ニューヨーク州のロングアイランドにあるホーポージやロンコンコマという町に拠点を移すたび、会社は大きくなっていきました。
やがてアメリカ国内最大級のミリタリーウェアメーカーとなり、長年にわたって数多くの衣類や製品を発表してきたロスコ。
M-65フィールドジャケットからキャンバスバッグに至るまで、各アイテムの根底にあるのは“ミリタリーの伝統”です。

ロスコの生み出すミリタリー製品は、米軍兵士から非常に高い評価を受けていますが、今ではそれだけとどまらず、キャンプ用品などのアウトドアアイテム、警察のユニフォームやセキュリティ用品など、幅広い商品ラインナップを持つブランドに成長しています。

そんなロスコの数ある製品の中でも、特に人気の高いアイテムがカーゴパンツです。
ロスコのカーゴパンツの魅力を一言で表すなら、“本物の軍用品”であるということ。
ハードな環境下で使われる実用品であるため、リーズナブルな価格にもかかわらず、高い機能性と耐久性を持っています。

それにもともとファッション性を意識して作られたパンツではないので、誤解を恐れずに言えば野暮ったいドカンとしたシルエットを持っています。
しかし今はストリートでそうしたビッグシルエットが人気なので、ずっと同じスタイルで作り続けているロスコのカーゴパンツに注目が集まっているというわけです。

ロスコ①
photo:Jett Brooks/flickr

1960年代の若者がファッションとして注目

そもそもカーゴパンツとは、どんな服なのでしょうか。
cargo(カーゴ)は日本語に訳すと「貨物」の意味で、カーゴパンツはもともと貨物船の乗組員のために開発された作業用パンツでした。
脚部の両脇に大型のポケットが貼り付けられているのが最大の特徴で、これは俗に“カーゴポケット”と呼ばれています。

同じように脚部のサイドにポケットが付いていて、左脚にハンマーループ(金槌を吊るす環)がついたペインターパンツと混同している人も見受けられますが、貨物船の乗組員用のカーゴパンツと塗装職人用のペインターパンツは、似て非なるものです。

船員が細々とした道具を持ち運ぶとき手がふさがらないよう、道具入れ用の大きなポケットがつけられたこのパンツは非常に便利だったため、1940年代頃から世界各国の標準的な軍服にも取り入れられます。

ミリタリーの分野でのカーゴパンツは、アメリカ軍のM-65やフランス軍のM-47が有名です。どちらもドカンとしたビッグシルエットで、足の両サイドに大きなポケットが付いているという点では同じですが、M-47は比較的シンプルな作りであるのに対し、M-65は膝に動きやすさを考慮したタックがあったり、ウエストの両サイドにアジャスターがあったり、裾がドローコードで絞れるようになっていたりと、より実用的・実戦的な作りです。
ロスコはアメリカのメーカーですので、そのカーゴパンツはM-65の系譜を継ぐ、凝ったディテールを持つものとなっています。

軍服の多くはそのモデル名に、兵士に支給された年の西暦下2桁が付与されています。つまりM-47は1947年、M-65は1965年のリリースということになります。
1965年といえば、アメリカがベトナム戦争の泥沼にはまりつつあった頃ですが、同時期にアメリカの西海岸では、ヒッピーカルチャーに染まった若者たちが反戦運動を繰り広げていました。

そんなヒッピーたちは、ファッションとして敢えて街中で軍服を着て、反戦の意思を示すことが多かったと言います。
いわゆる“ミリタリーファッション”の始まりですが、ちょうどその頃にリリースされたM-65カーゴパンツもヒッピーが初めておしゃれに取り入れ、それ以降何度もストリートでトレンドが繰り返されてきました。

ロスコ②
photo:BenDC/iStock

正真正銘・本物の“軍服”

今のカーゴパンツのトレンドが、ヒッピーたちの時代から数えて何度目のリバイバルなのかはわかりませんが、現代ではより洗練され、カーゴパンツを取り入れたおしゃれの幅も大きく広がっているといえるでしょう。

それではここから、ロスコの代表的なカーゴパンツをご紹介していきたいと思います。
まずは「ジッパーフライ タクティカル パンツ」。
6ポケット仕様で、ウエストの両サイドにはサイズ調節のためのアジャスター、膝には立体縫製のタックが施されている、アメリカ軍らしい典型的なカーゴパンツです。
その名の通り、フロントはジッパーフライ仕様なので着脱は楽々。

【ロスコ】

素材にはコットンとポリエステル混紡の丈夫なツイル生地を使用しているので、穿き心地が良く、耐久性に優れたミリタリーパンツです。
後述するボタンフライの「B.D.U パンツ」に比べ、シルエットが太めに作られているので、より今っぽいビッグシルエットの着こなしができるのではないでしょうか。

せっかくのビッグシルエットなので、トップスもオーバーサイズのTシャツを合わせ、ゆるい雰囲気のコーディネートがおすすめです。

続いてご紹介したいのが、ボタンフライ仕様の「B.D.U パンツ」。

【ロスコ】

「ジッパーフライ タクティカル パンツ」と同様6ポケット仕様で、ウエストの両サイドにはサイズ調節のためのアジャスター、膝には立体縫製のタック、両膝とヒップには補強パッチが施されています。
また、裾には絞るためのドローコードが施されており、M-65と非常に似たディテールであるのが特徴です。

ちなみにB.D.U.とはBattle Dress Uniform(バトル・ドレス・ユニフォーム)の略。1981年にアメリカ全軍で正式採用され、2012年に海軍で使用終了されるまで、兵士が実際に着用していた戦闘服です。
M-65と同様、ミリタリー“風”ではなく正真正銘・本物の軍服なのです。

「B.D.U パンツ」は前述の「ジッパーフライ タクティカル パンツ」と比べ、やや細身のシルエットです。とは言ってもカーゴパンツですので、かなり太めではあるのですが、いくらトレンドとは言え太すぎるのは履きにくいと考えている方は、「B.D.U パンツ」の方を選ぶとちょうどいいのではないかと思います。

プレッピーなボタンダウンシャツとローファーなどを合わせ、カーゴパンツで外すコーディネートがオシャレではないかと思います

ロスコ③
photo:Longfin Media/iStock

ユニークなZ-CRAFT別注モデル

ロスコには様々なブランドやショップとのコラボレーションモデルがあります。
そこでここからは、Z-CRAFTがロスコに別注した2本のカーゴパンツをご紹介しましょう。

「TWO TONE CAMO BDU CARGO PANTS」は前述の「B.D.U パンツ」をベースにしていますが、オリジナルとの違いは一目瞭然です。

【ロスコ】

右足は無地、左足はカモ柄というアシンメトリーデザインになっていて、なんともユニークな表情を見せてくれるカーゴパンツです。
スタイリングの幅が広がり、穿くだけで人と一味違う雰囲気を醸し出せるので、重宝することは間違いありません。

左右で柄が違うアシンメトリーデザインであること以外は、すべてオリジナルの「B.D.U パンツ」と同じディテールを持っています。
すなわち6ポケット仕様で、ウエストの両サイドにはサイズ調節のためのアジャスター、膝には立体縫製のタック、両膝とヒップに補強パッチ、裾にはドローコード。
これらの本格ミリタリー仕様は実用的であるとともに、気分を盛り上げてくれる役割も果たしてくれるでしょう。

お気に入りのバンドTシャツ、そして編み上げブーツと合わせて、ロックっぽいスタイルを作ってみてはいかがでしょうか。

そしてもう一つのZ-CRAFT別注モデルが「4POCKET DOUBLE KNEE BDU PANTS」です。
こちらも「B.D.U パンツ」をベースとしながら、より大胆な変更が施されています。

【ロスコ】

最大の特徴はカーゴパンツになくてはならないはずの、両脚サイドの大きなポケットを省いたところでしょう。
そして膝の立体縫製も排し、代わりにカモ柄のパッチが施されています。
裾野ドローコードもなく、全体的にすっきりとシンプルなデザインですが、膝のカモ柄パッチが大きなアクセントとなっているのでインパクトは抜群。
ありそうでなかったデザインなので、ミリタリーファッション好きやロスコファンからも「それ、どこで買ったの?」と注目されることは請け合いです。

裾をロールアップしてビーチサンダル、トップスは麻の開襟シャツを合わせ、ビーチ&サーフっぽい雰囲気にコーディネートしても良さそうです。

ロスコのカーゴパンツとコーディネート提案をお伝えしてきましたが、カーゴパンツの着こなし方は人それぞれです。
ミリタリーウェアだからといって、ハードめなアイテムを合わせて全体的にゴリゴリにする必要もなく、あくまで自由にカジュアルにコーディネートするのが面白いのではないかと思います。

ロスコ④
photo:zim286/iStock

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